2016年2月4日木曜日

パーニニの教科書が出来ました!

 ओं श्रीगुरुभ्यो नमः ।

本日は立春、グルの日(木曜日)、エーカーダシー、と吉兆な日が重なり、
新しい本のリリースに良い日頃になりました。

伝統的なサンスクリット語文法を教える教科書の歴史に、
革命を起こしています。


以下のリンクから無料でダウンロード出来ます。
http://arshaavinash.in/index.php/download/study-guide-to-laghu-siddhantakaumudi-part-1/


8年前、サンスクリット語の勉強を始めた頃、
どの教科書も不親切なプレゼンで分かりづらく、腹立たしく思い、
「私がきっちり勉強して、もっとわかりやすい教科書を書いてやる!」
と誓ったものでした。

「サンスクリット語は難しい」と思われているのは、
サンスクリット語が難しいからではなく、
教科書を書いている学者が、
学習者に理解してもらいたいという、誠実な願いからではなく、
自分達がどれだけアカデミックなんだじょ!というのを認めてもらうが為に、
わざと混乱させるように書いているに違いない、
と今でも私は思っています。

サンスクリット語は難しくありません。
きっちり理解した人が、わかってもらいたい、というハートを持って、
システマッティクにプレゼンすれば、
これほど理に適って腑に落ちる言語はないと思います。

私が、もっとわかりやすい教科書を書いてやる!

というようなことを、8年ほど前にインターネット上で宣言した際、

従来の旧式教科書を大絶賛する(その世界ではよく知られた)人から
 「西洋人が残した従来の教科書の訳で充分じゃないですか。
従来の教科書の良さがわからないのですか?」
というようなコメントを頂いたりしたものでした。

19世紀に西洋人の学者によって、上から目線で書かれた教科書は、
出来るだけ避けるべきだと思っています。
特にヴェーダをプラマーナとして見る必要がある学生には。

現在教えている3年のコースの生徒たちは、
今まででは在り得ない程のスピードと正確さで文法を学習してくれています。
もちろん、リラックス・モードで。人と比べたり、批判したり、絶対しない。
アントワンなどの教科書は、3年目に、
「こういう勉強の仕方を今までの人々はしていたのよ」
という形で、その非効率性を指摘しながら紹介するつもりです。

Om

2015年6月27日土曜日

グナ(गुणः [guṇaḥ])

1章1節第2スートラ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[संज्ञासूत्रम्] 1.1.2 अदेङ् गुणः ।
अत् 1/1 एङ् 1/1 गुणः 1/1
The short अ and एङ् (ए  and ओ) are called गुणः.

スートラの意味: 短い「ア」、「エー」、「オー」の3つの音を、グナと定義する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

サンスクリット語文法学習者に根付いている、「グナ&ヴリッディ」の混乱


現代では、間違った教え方が主流になっているサンスクリット語文法。

大袈裟ではなく、私は改革を起こしているサンスクリット文法の教師です。

間違った教え方のせいで、基本の基本で混乱が起きているのを目の当たりにしてきました。


今回は、グナとヴリッディの混乱についてまとめます。


混乱1:音の変化を示す言葉、という混乱



ヴリッディの項でも説明しましたが、グナも、ヴリッディも

それぞれ3つの音を示す言葉であり、

音の変化を示す言葉ではありません。


よくある間違った説明:

第一段階の変化をグナ、 第二段階の変化をヴリッディ といいます。

これは間違った説明です。

NG「~の音が~の音に変化するのが、グナです。」

OK「~の音が、グナの音に変化すると、~になります。」


変化しなくても、「ア」は「ア」のままで、グナと呼ばれます。

「エー」も「オー」も然りです。何の変化がなくても、もとのままでグナです。


何度でも繰り返しますが、

言葉: グナ
言葉の意味: 短い「ア」、「エー」、「オー」の3つの音

この意味のプラマーナは、スートラ1,1,2です。何の交渉のしようもありません。




混乱2:「ar」と「al」もグナ、だという混乱



これは、パーニニを勉強した事の無い人の殆ど全ての人が持っている混乱です。

パーニニを勉強しても、それ以前のサムスカーラが強すぎて、

理解を変えられない人もいます。


よくある間違った説明:

ṛ/ṝ のグナは「ar」、 l̥ のグナは「al」。

グナの音は3つだけなのに!

正しくは、

「ṛ/ṝ 、 l̥ の音に対応するグナの音は「a」である。

グナとは全く別のルールで、その後ろにそれぞれr、lが付く。 」

です。

全く別のルールとは、

「ऋ/ऌ が अण् に変化するとき、रेफ ल् が後ろに来る(1.1.51 )」

です。



「初心者にいきなり教えても分からないから、最初のうちはこういう教え方でもいい」

という人もいますが、

どうせ、後にも先にも、矛盾や混乱をおこすだけなので、私は最初から全部を教えます。

そんなに難しいことではありません。

教える人の理解がクリアーであれば、聞く人が誰でも分かることです。

難しいどころか、頭を使うこと、理解することの楽しさや嬉しさを教えてくれるステップです。

そういうわけで、考えて理解する楽しみを知ってもらう、という感じで教えています。


グナという言葉が使われる場面



グナとは、「ア、エー、オー」の3つの音に付けられた名前です。

何故名前がつけられたかというと、もちろんその使い道・応用があるからです。

グナという言葉が使われる場面には大体2つあります。


1.サンディ(連音変化)が起きる場合

例:
連音変化のルールのひとつ、「アの後ろに母音が来たら、2つ一緒にグナになる(6.1.87)」
ウパ + インドラ = ウペーンドラ

2.接尾語が来たときの、基幹への変化

例:
「動詞の原型に付く接尾語は、基幹である動詞の原型の最後のइक्にグナを起こす(7.3.84)」
ニー + トゥル = ネートゥル




まとめ


グナとは、短い「ア」、長い「エー」、長い「オー」の3つの音に付けられた名前。

グナとは、変化のことを指すのではなく、3つの音そのものを指す言葉である。

「ar」や「al」はグナとは呼べない。

グナという言葉が使われる場面は、主にサンディによる変化とアンガの変化。



今までの固定概念を取り払って、理解に努めてください。

前回のヴリッディの説明も参考にしてください。


2015年3月8日日曜日

ヴリッディ (वृद्धिः [vṛddhiḥ])

パーニニ・スートラのイの一番、おめでたい最初のスートラです。

1章1節第1スートラ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[संज्ञासूत्रम्] 1.1.1 वृद्धिरादैच् ।
वृद्धिः 1/1 आत् 1/1 ऐच् 1/1
[सिद्धान्तकौमुदीवृत्तिः] आत् 1/1 ऐच् 1/1 च 0  वृद्धिः 1/1 स्यात् III/1 ।
The long आ and ऐच् (ऐ  andऔ) are called वृद्धिः.

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

私が現在執筆している教科書のフォーマットです。


スートラの意味


日本語に翻訳すると、

「ヴリッディとは、長音の”アー”と、”アイ”、そして”アウ”の3つの音の名前である。」

となります。つまり、

ヴリッディ = ”アー”、”アイ”、”アウ”

簡単ですね。

これら3つの音を、ヴリッディと呼ぶのです。


スートラでは、”アイ”と”アウ”を共にプラッティヤーハーラにして、

「aic(アイチ)」と呼んでいます。


名前とその意味


名前(name)には必ずその意味(named)があります。

それらの関係を示すのが、スートラの機能の一つです。

このスートラでは、

名前(name):ヴリッディ

その意味(named):”アー”、”アイ”、”アウ”

という訳ですな。


全ての名前には必ず用途があります。

これって、とても哲学的ですね。


まぁ、それは置いといて、ここでは、

ヴリッディという名前は、サンディ(連音)のルールや、

接尾語を付けたときの基幹の変化のルールにおいて使われます。



大事なのは、ヴリッディとは、3つの音の名前であるということです。

アントワンなど、西洋のサンスクリット学者の著書や、

それの焼き直しの日本語の著書では、

ऋ, ॠ, ऌ の音のヴリッディは、आर्, आल् と教えていますが、

それは間違いですね。

「आर्, आल्」という音は、ヴリッディとして定義されていないのですから。

これらのヴリッディの音は、「アー(आ)」です。

もうひとつのルール、1.1.51 उरण् रपरः । というスートラで、

ヴリッディの音は、「アー(आ)」の最後にRやLが付くのです。

そんなことどうでもいいじゃん、と思う脳みそではパーニニは勉強出来ないし、

パーニニの構造がなければ、その構造を脳みそに持ったバーシャカーラの勉強が出来ません。

実際、アントワンでサンスクリットを勉強した人にパーニニ文法を教えるのは大変です。

パーニニとは逆のオリエンテーションで、考えがコンディションされているからです。

「どうでもいいじゃん」という思考態度(スワミジの言うパジャマ・ティンキング)

を改める為にパーニニの勉強をしているのですよ。


ヴリッディという言葉の意味


文法用語としてではなく、サンスクリット言語で通用している意味では

ヴリッディとは「繁栄」という意味です。

家に新しい子供が生まれたときには、今でもインドではヴリッディと言います。


この言葉を、スートラのイの一番に、しかも、最初の言葉に持ってきたには、

「この知識が繁栄しますように」という願いが込められているのです。

ハヌマーンジーは、9つの文法システムを知っていました。

パーニニ文法はその9つのうちの一つにすぎません。

しかし、他の8つは時代の流れと共に消えてしまいました。


スートラは短さが命ですから、祈りの詩などを含めている場合ではありません。

しかし、伝統では祈りの詩のないような文献は研究に値しないと言われています。

そしてもうひとつ、命名スートラの場合、名前はスートラの最後に示されるのが通例になっています。

パーニニは、意図的に「ヴリッディ」という言葉を前に持ってきて、

祈りの詩を暗示したのです。


この伝統の知識を受け継ぐ人々が安心して勉強出来る、平和な社会であり続けますように。

शान्तिः शान्तिः शान्तिः ॥

2014年8月31日日曜日

スートラの理解のステップ

スートラを勉強する時は、何は無くとも、

まずは手元に、

アシュターディヤーイー・スートラパータ(अष्टाध्यायीसूत्रपाठः [aṣṭādhyāyīsūtrapāṭhaḥ] )

が必要です。

アシュターディヤーイー・スートラパータとは、4000のパーニニスートラが

番号順に載せられている小さな本です。

日本では販売されていないと思います。

2012年に私が編纂したヴァージョンが、自分で言うのも何ですが、

使い易くてお勧めです。

日本でも入手出来るように努めますので、必要な方はご連絡ください。


まず最初に、今から勉強するスートラを、アシュターディヤーイー・スートラパータの中から

番号を頼りに見つけて、スートラの前にチェックマークをいけるのです。


スートラの意味は、以下のA~Dの4ステップで理解します。

A.  スートラの種類:

6種類あります。

B. スートラに含まれる言葉:

サンディを切り、言葉の数も数えます。

C. 前のスートラから引っ張ってくる言葉:

アヌヴリッティと呼ばれる、前のスートラで使われている言葉で、
今のスートラで繰り返し使われる言葉を引っ張ってきます。

D. スートラ全体の意味:

スートラ自体の言葉と、アヌヴリッティの言葉を併せて、理解します。

E. スートラの応用:

実際にスートラがどのような変化を起こすのか、例を見ます。


このサイトでは、この4ステップに沿って説明します。

6種類あるスートラの種類 

先に説明したスートラと呼ばれる形式の文献には、

6種類あると言われています。

それを述べたシュローカ(詩句)が以下です。

संज्ञा च परिभाषा च विधिर्नियम एव च  ।
अतिदेशोऽधिकारश्च षड्‍विधं सूत्रलक्षणम् ॥

saṃjñā ca paribhāṣā ca vidhirniyama eva ca  |
atideśo:'dhikāraśca ṣaḍ‍vidhaṃ sūtralakṣaṇam ||

スートラの種類は6種類


1.サンニャー(संज्ञा [saṃjñā])・スートラ


他のスートラで使われる特殊な用語の定義をするスートラ。

2.パリバーシャー(परिभाषा [paribhāṣā])・スートラ


他のスートラの解釈において、特殊な解釈が必要な時、それを提供するスートラ。

3.ヴィディ(विधिः [vidhiḥ])・スートラ


言葉に変化を起こすルールが言い表されているスートラ。

4.ニヤマ(नियमः [niyamaḥ])・スートラ


他のスートラの有効範囲を限定する為のスートラ。

5.アティデーシャ(अतिदेशः [atideśaḥ])・スートラ


他のスートラの有効範囲を拡張するためのスートラ。

6.アディカーラ(अधिकारः [adhikāraḥ])・スートラ


後ろに続く複数のスートラの主題を表すスートラ。

        ***

これで6種類です。

4000あるパーニニ・スートラも、6種類に分類出来ます。

あと、もう1種類付け足すとしたら、

7.ニシェーダ(निषेधः [niṣedhaḥ])・スートラ


他のスートラで言われた決まりについて、例外的に適用範囲外にある事項を述べたスートラ。


Q: 
4のニヤマと、7のニシェーダの違いは?

A: 
ニヤマは、「適用範囲はこれだけです。」という言い表し方で、

適用範囲外の項目は暗に理解される。

ニシェーダはその逆で、「これには適用されません」という言い表し方で、

適用範囲外の項目をそのまま述べている。

という違いです。


次回からは、それぞれのスートラの種類を例を挙げながら見て行きましょう。



スートラの定義

スートラ सूत्रम् [sūtram] とは、


ある知識を総括して伝える為の、短くまとめられた文章を指します。

サンスクリット語で「スートラ」 सूत्रम् [sūtram] とは、「糸」という意味の言葉です。
スートラ形式で伝えられた文献も、糸のように、複雑に絡み合って、一本をつまむと、他のスートラが沢山ついてくるのです。

サンスクリット語で伝えられている文献には、いろいろなスタイルがあります。
ある文献が、スートラ सूत्रम् [sūtram]と呼ばれるためには、以下の基準を満たしていなくてはなりません。

अल्पाक्षरमसंदिग्धं सारवद्विश्वतोमुखम् ।
अस्तोभमनवद्यं च सूत्रं सूत्रविदो विदुः ॥
alpākṣaramasaṃdigdhaṃ sāravadviśvatomukham |
astobhamanavadyaṃ ca sūtraṃ sūtravido viduḥ ||


ある文献が、スートラ सूत्रम् [sūtram]と呼ばれるたの、6つの条件


1.最短であること。अल्पाक्षरम् [alpākṣaram]

一昔前までは、全ては口伝で教え継がれていました。
辞書でも教科書でも、全部暗記していたのです。
ゆえに、短いと言う事はとても重要な事なのです。

2.疑いの余地がないこと。असंदिग्धम् [asaṃdigdham]

この意味かな?どの意味かな?こうも取れるね。ああも取れるね。
ではいけないのです。
スートラからは、はっきりした意味が取れなくてはなりません。

3.意義があること。 सारवत् [sāravat]

スートラの意味は、何かに変化を起こすなり、何かに名前を付けるなり、何かしら意義が無くてはなりません。

4.多方面で応用出来ること。 विश्वतोमुखम् [viśvatomukham]

スートラの意味は、普遍的な意味を持ち、マルチな場面で応用されなくてはなりません。

5.感嘆詞などは要らない。 अस्तोभम् [astobham]


6.間違いが無い。 अनवद्यम् [anavadyam]

スートラによって伝えられている内容は正しいはずで、後で理屈で覆されるような内容であってはなりません。

「~・スートラ」と名づけられた文献がインドには幾つかありますが、それら全てが上記の6つの条件を満たしているとは限りません。

ここで勉強している「パーニニ・スートラ」やヴェーダーンタ文献の「ブランマ・スートラ」は、これら6つの条件を満たしている、正真正銘の「スートラ文献」です。


>> 次は、スートラの種類を見てみましょう。>>


2014年5月6日火曜日

パーニニの勉強についてのQ&A

先日、パーニニの勉強方法についての質問がありました。答えと併せて、ここでシェアします。


= パーニニ文法の伝統的な勉強の過程はどのようなものでしょうか? =

パーニニスートラを理解する過程において、
スートラの番号順に勉強しても、あまり理解できません。
単語の形(raama + su=raamaHみたいな)を導き出すための
ステップ(declensionやconjugationなど)を通してスートラを勉強する方法が、
kaumudi-granthaと呼ばれる本の中で扱われています。

kaumudi-granthaには、
約4000あるパーニニスートラの全てを扱っているSiddhantakaumudi、
そしてそれの縮小版である、laghu, madhyama, saraなどがります。

普通はまず、laghuをしっかり勉強してから、Siddhantakaumudiに進みます。
勉強する過程で、スートラを番号順に暗記したり、kaasikaaも併せて勉強したりします。

文法を勉強に進む前に、普通は、自分の家系に属しているヴェーダと、
ギーターや、サンディヤーヴァンダナ等の祈りのシュローカなどを
ある程度暗記するようになっています。

サンスクリットの音を耳から入れて、頭と喉に刷り込むという過程を通してから
文法を勉強すると、文法の理解も、ヴェーダやギーターなどの文献の意味の理解も、
両方とてもスムーズに進みます。

逆にその過程なしに、文法の勉強をするのは、
サンスクリット文献を学ぶ伝統に沿っていないので、実りが少ないように伺えます。


= Laghusiddhaandakaumudiの勉強にはどのくらいの時間がかかるのでしょうか? =

毎日1時間の授業+予習・復習で、うまく行けば1年間で勉強できます。
いろいろな人を教えてきましたが、かなり速い把握力と記憶力の持ち主でないと、
このペースでしっかり理解してもらうのは難しいです。

余談ですが、リシケシでは皆(ブランマチャーリーとかサンニャーシンとか)
シャーストラを勉強する前には、まずlaghuを勉強するのですが、
様々な障害物が出てきて1年で勉強を終わらせることが出来る人は稀です。
病気になったり、住んだり勉強したりする場所が使えなくなったり、故郷に帰ることになったり。。。
サンスクリットはDevabhashaと呼ばれるだけあって、たくさんのPunyaが必要なようです。